2019/09/02入部できない?何があっても、意地とプライドで記録を出し続けた小さなランナー

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プロフィール

田中寛子大阪市立大学 陸上競技部

田中寛子(たなかひろこ) 2000年2月9日兵庫県出身。千葉市立真砂中から芦屋市立山手中に転校後、須磨学園高校を経て大阪市立大学に進学する。身長162cm体重48kg。専門種目は400m(PB57.32)と800m(PB2.12.08)。主な成績として、 近畿ユース800m3位 日本ユース800m出場 関西学生新人800m優勝などがある。

インタビューのまとめ

2020年に開催される東京五輪では、陸上競技のチケットの価格が最も高価で販売されるほど、世界的に注目を集めています。私たち、8CROSSライターには陸上競技に携わってきた者が多く、「陸上競技に貢献したい!」という志が一致し、今回陸上競技特集を立ち上げました。今回は陸上選手紹介の第6弾として、大阪市立大学の田中寛子選手を特集いたします!

陸上だけでなく学業も!何事にもストイックな田中選手

Q 田中選手が陸上競技を始めたきっかけを教えてください

田中

きっかけは小6の時に千葉に引っ越してある子に出会ったことです。それまで、学年50人弱しかいない小さな学校に通っていた私は、体育のマラソンやシャトルランは男の子に負けたことがなく、自分は長距離が得意だと思っていました。ところが引っ越して状況が一転。男の子には全然叶わないし、何より私よりもずっと先を走る女の子がいました。学年で1人しか代表になれないマラソン大会で私は補欠となり、悔しい思いをしました。その一方で彼女と一緒に走ったら強くなれる、いつかライバルと思ってもらえるように頑張りたいという気持ちが芽生えるようになりました。中学に上がり彼女とともに陸上部に入部しました。2人で全中に出ようと約束し、中2になって転校してからも彼女が私の励みでした。私は昔から何をやっても長続きせず夢中になれるものがありませんでした。彼女との出会いと存在は本当にかけがえのないものです。

Q 今までで一番印象に残っている大会はありますか?

田中

大学での関西新人です。関西規模の大会で初の優勝を果たしました。決勝に出場する選手の中でエントリータイム4番だった私は、まさか自分が先頭でゴールするとは思っていませんでした。ラスト一周を迎えて2位で通過したラスト100m。チームの声援がはっきりと聞こえそれに背中を押され気がつけば1番前を走っていました。中高の長い期間人数の少ない部活に所属していた私にとって、大きな舞台での声援は初めて味わうものでした。仲間からの声援に力をもらって掴み取った優勝は忘れることができません。

Q 大きな試合で結果を残す田中選手の強さの秘訣を少しだけ教えてください

田中

中高時代に、部活一本に絞らず取り組んだことだと思います。中学で全中に出場したことで、進路選択の時には推薦で高校に進学する道もありました。しかし中学時代の私の武器は勉強と陸上との両立にあったと考え、一般入試で高校に進学する決断をしました。結果公立高校は不合格で推薦を頂いていた私立に一般入試で進学することとなりましたが、三年間三類に在籍し、常にクラス上位を維持してきました。部活も勉強もいい加減にしたくない気持ちが、時間の使い方や自分の価値観を作ってきたと思います。高校時代は特に両立に苦しみ、毎朝4時起きで勉強してから朝練に向かう生活が当たり前でした。苦しい時もありましたが、強くなりたい気持ちと仲間の支えのおかげで乗り越えられたと思います。

専門種目に出れないことも⁈それでも大親友がいるから私は頑張れるのだ

Q 競技に取り組む上でのモチベーションになっていることはありますか?

田中

中2の時に出会った大切な親友の存在がモチベーションになっています。中3で東京に引っ越してしまい、一緒に陸上できたのはたった1年でしたが、彼女と過ごした時間が1番濃かったと思います。私が転校してきた頃の陸上部は砂遊びをしたり鉄棒にぶら下がったりと部活とは程遠い環境にありました。そのような環境で1年間陸上をしてきた彼女と、厳しい環境の中で陸上をしてきた私とでは価値観の違いを大きく感じ、口論になることもたびたびありました。今思えばここまで言い合える友人は今までいなかったと思います。中3になり、彼女が東京に転校してからは、全国に出て再開しようとお互い陸上に励みました。高校進学の際に陸上の強豪校に入った彼女を本当にかっこいいと思っています。一般入試で私立に進学し、強化部には入れず勉強との両立に苦しんだ私にとって、彼女の活躍は勇気と希望を与えてくれました。中学時代は種目も性格も大きく異なっていた私たちですが、今では種目も同じ、陸上や将来のビジョンに対する考え方も似ていてお互いがお互いに刺激をもらう関係です。中学時代は彼女が、高校時代は私が全国出場を果たせず、同じ試合に出場するという2人の目標は達成できていません。大学こそ2人で全カレ出場を果たして戦友として戦いたいと思っています。

Q 8CROSS編集部の佐藤と山本と同じ中学校出身ということですが、中学時代の経験が生かされることはありますか?

田中

私は中学2年時に芦屋山手中に転校しました。入部した時、「この部活で本当に強くなれるのか」と不安でした。というのも、千葉の中学で経験してきた厳しい部活とは雰囲気がまるでかけ離れていたからです。さらにはメニューが与えられず、自分たちで考えて作り出すという環境でした。しかし、そのような環境だったからこそ、「どうしたら強くなれるのか」「今の自分に足りないものは何か」を客観的に考える機会となり、自分の強みになったと思います。また、少しずつ自分の想いが周りに伝わり部活の雰囲気も少しずつ良くなって行きました。人数が少なく、自分たちで思考錯誤しながら部活を進めて行くことでつかんだ全中出場は、高校で勉強と並行しながら部活に取り組む時間管理能力や効率的な練習に生かされていると思います。何より、自分で考えたメニューが中心の練習の中で全中出場を果たしたことは、大きな自信となっています。

Q そういえば、田中選手は高校に進学してから専門種目の800m出場の機会が減ったように思えますが、その背景には何か出来事があったのですか?

田中

私は学業で高校へ進学したいと考えていたので、公立高校を受験しました。須磨学園は、推薦のお話もいただいていましたが、滑り止めとして一般入試で受験しました。正直、須磨学園に入学が決まった時は、800mを専門とすることは諦めていました。須磨学園の女子長距離部は強化部として、三類(田中選手の学科)の生徒が入部することは禁止されていました。駅伝部に入れないことは、中学で専門としていた800mに出場できない可能性が高いということでもあります。陸上を高校で続けるかどうか迷いもありましたが、中学時代から高校になったら400mに挑戦したいという気持ちもあり、強化部でない女子短距離部に入部を決めました。全中に出場したというプライドからも、高校でも全国大会に出たいという気持ちがあり、毎日朝練午後練ともに必死に取り組みました。その意思が先生方にも伝わり、高2のユースで初めて800mに出場する機会をいただきました。自分でつかんだチャンスで日本ユース出場を果たせたのはとても嬉しかったです。自分の頑張りを影で応援し、支え、見守ってくださった顧問の先生や、長距離の監督には感謝しきれません。

速く走ることだけが強さではない。陸上競技の魅力に引き込まれた彼女は今後どうなるのでしょうか

Q 一時は専門種目を諦めざるを得ない状況に立たされた田中選手ですが、それでも競技を継続する理由はなんでしょうか?

田中

陸上競技には魅力がたくさんあるからです。陸上は決して速さを競うだけの個人スポーツではないということ。私は中高と人数の少ない部活に所属してきました。しかし、私が全国まで進めたのは個人の力ではありません。千葉や東京の友人の活躍が私を奮い立たせ、後輩や先輩の応援、家族や恩師の支えがあってここまで来れました。試合で本当に強い選手というのはそうした支えの存在に感謝し、それを力に変えられる選手だと思います。誰もが速くなりたい、勝ちたいと思う中で、優勝できるのはたった1人です。1/1000秒でも、1センチでも1位と2位の重みは全く違います。そのわずかな差は仲間への感謝や日々の積み重ねの差によって生まれると思います。そうした日々の集大成がはっきりとあらわれるスポーツは陸上以上には無いと思います。

Q 最後に田中選手の志を教えてください。

田中

私の志は、「何事も手を抜かないで全力で取り組む」ということです。これは陸上においても、プライベートでも言えることです。手を抜いてしまうと私の周りにいる応援してくださる方々に失礼だと考えています。
というのも、陸上を通して仲間や周りの人たちの支えを感じてきました。仲間がいなければ乗り越えられないこともたくさんあったと思います。今、両立の難しさや記録が伸びに苦しんでいる人たちに、自分を支えてくれている仲間がいることを感じて欲しいです。
私は今後、「ただ速い選手」ではなく「強い選手」になりたいです。周りで支えてくれたり応援してくれる人に感謝を伝え、それを原動力に変えられるような選手になりたいです。私が1人の人に憧れて陸上を始めたように、私の走りを見て勇気をもらったり陸上に興味を持ってくれる人がいたら嬉しいです。

田中寛子さんの情報

8CROSSへのメッセージ

私の芦屋山手中時代のチームメイトである佐藤と山本が運営に携わっています。これからも陸上を盛り上げるきっかけを作っていってください!

大阪市立大学陸上競技部への入部をお待ちしております!

大阪市立大学の陸上部は、公立高校ですが、男子はマイルや200m、800m、女子は競歩などで全カレに出場しています。現在女子選手は11名しかいませんが、全カレ出場や市大記録更新など活躍の幅を広げています。3.4回生の先輩方が引退してしまったらリレーメンバーや駅伝メンバーの人数が足りない状況です。今ならすぐに先輩たちと試合に出場できます。人数が少ない環境だからこそ自分の意見が反映されやすく、自分でやりたいように打ち込める環境があります。陸上に打ち込みたい方、高校で完全燃焼しきれなかった人、未経験だけど興味がある人などいらっしゃいましたら是非、市大陸上部を覗きに来てください!部員一同お待ちしています!

編集後記

タイトルに「小さなランナー」とつけたのは、田中選手はかつて、身長が140cm代の超小柄な選手だったからです。同じ中学のチームメイトとして練習に励んでいました。どちらが先に全国大会出場を決めるか?なんて争っていましたが、私はここぞ!という場面で失態を犯してしまうことが多々ありました…(苦笑)それでも、私たちの代で母校の中学の部活の雰囲気はかなり改善されたと思います。彼女のストイックな面を中学時代から見ているからこそ、もっと好成績を出して、上の舞台で戦って欲しいと考えております。がんばれ田中!

written by

佐藤 玄主

佐藤玄主8CROSS 編集長

1999年11月20日 兵庫県芦屋市出身。芦屋山手小在校中にボランティア活動の任意団体「超丸商店(芦屋山手超丸会)」設立し、ボランティア・スピリット・アワードを受賞。その後、尼崎市立尼崎高等学校を経て慶應義塾大学経済学部通信教育課程に在学中。2018年には西宮神社の伝統神事「福男選び」において一番福を獲得。2019年には一般社団法人クロスポイントプロジェクトを設立した。現在は転学を目指し、社団法人運営の傍でひっそりと受験対策をしている。

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